一般社団法人Le Muse-Blog

音楽・芸術を中心にイタリアからの"いろいろ"通信

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音・絵・街・人・物との出会い

ローマ歌劇場公演『群盗』を見てきました~。

あまり公演されないオペラを見に行くようにしている私。
今回はイタリアでもほとんど公演されないヴェルディの『群盗』を聴きにローマ歌劇場へ。
この劇場でも実に45年ぶりの公演らしい。
指揮 ロベルト・アッバード
演出 マッシモ・ポポリツィオ
出演
リッカルド・ザネッラート(マッシミリアーノ)
アンデカ・ゴロチャテギ (カルロ)
アルトゥール・ルチンスキ(フランチェスコ)
ロベルタ・マンテーニャ (アマリア)

 

劇場はいつ来てもウキウキ、ワクワクしてしまう場所

だけど、ローマ歌劇場公演にはあまりいい印象がなく。。。
ヴェルディオペラであまり公演されない演目だから行きたい!よし、行く!と
チケット購入後も、劇場に向かいながら『どうかな・・』と。
でも、劇場内に入ってうっとり。何度来てもやはり素敵。
ストーリも音楽もわかってるのに足を運びたくなる劇場の魅力の一つです。

このオペラは33歳の若きヴェルディが初めてイタリア国外の劇場のために書いたもの。なので、イタリアンオペラ的な要素結構満載。
確かに、売上を期待してヨーロッパに日本伝統の物を輸出、販売する時には、ヨーロッパ人が望む、思う日本的要素の物をまずは考える事と一緒かな。
カルロ、フランチェスコ、アマーリアの主要登場人物にアリア、カヴァティーナをたっぷり歌わせる第1幕とか、ヴェルディの名を知るロンドンの観客が待ってるイタリアンスタイルを『どうぞ~ご堪能下さいませ~』という感じ。

『群盗』をググると『台本が良くなーい』と皆さん書かれていますが、確かに。
前後の脈絡や、えっ、なんでそうなる? その展開はわからないな~・・ということはある。
台本作家って大事!!! 本当に大事。

アリア類のメロディーも流れが際立って、勢いが少し後退してしまう感はあるものの
さすがヴェルディ!
音楽は躍動感あり。
オペラを聴きながら、登場人物の中でヴェルディが特に興味を向けているのがフランチェスコかな?と思えてくる。
悪の限りを尽くし、罪の意識から精神的に病んでしまうフランチェスコ。
前作のマクベス夫人からつながるものもあり、フランチェスコのレチタティーボにはイアーゴが見れる!!
台本があまり良くないばかりで聴く機会のないオペラだけど、ヴェルディの人間内面心理の表現意欲が見られる作品としてはそれなりに意味ある作品のような気がしてきた。カルロも登場回数多く、どの場面も声楽的負担大きそう!
アマーリアの2つのアリアも重唱もかなり技巧的で、歌手にとっては結構難しいオペラかも。

ところで、あまりいい印象のないローマ歌劇場公演以前と書きましたが、今回はいい意味で裏切られた!
自分の事を超棚に上げて書いてます(笑)🙇

とても良かったのがフランチェスコ役のアルトゥール・ルチンスキ。日本でもすでに歌ったみたい。
オペラ台本のアナリーゼすることの大切さを常に感じている私。
ルチンスキは物凄くフランチェスコの役を理解してることがフレージング、音色、強弱、言葉抑揚、動き全てから伝わってきた!
歌いながらの動き、二重唱のとき相手役が歌ってるときの動き、音楽に合わせた動き、本当に素晴らしかった。
やっぱり私はこういうタイプの歌手が好き。ダニエラ・バルチェッローナをスカラ座で見たときもそう思ったけど。
ルチンスキの演奏は聞き手や話者自身の行動の方向付けをするのも言葉で、その言葉を理解することは動き、演技へもつながっていくことの証明かと。

アマーリア役のロベルタ・マンテーニャはローマ歌劇場が2016年から始めた若手研究所の卒業生。
音程、アジリタ文句なし。それよりも軽ーくふわっと届く声の響きに、これからも後を追ってみようと思わせる31歳のソプラノ。
カルロ役のアンデカ・ゴロチャテギ。かなり太めの声で結構貴重な声種。高音も悪くない!
演出家が出した動きを忠実に守ってます的なうえ、歌うときに体が動くのが癖になってくるのか,クネクネしてるから群盗の頭首としてその動きはいかがなものかと。日頃の癖って怖いですね~。

そしてオケも悪くなかった!!私が以前何回か聞いた時は、なんかしまり、まとまり、一体感がなく
『金管落ちるな、頑張れー』とドキドキした記憶だったけど、今回は調和がとれていて音にまとまりがあった!
びっくり!新しいやり手の劇場支配人がきたからかしら?
これならまた珍しいオペラ演目があるときはローマ歌劇場にも行こう~。

ここまではかなりいい出来の『群盗』だったの、演出、舞台装置がかなりイマイチ。
『私達お金ありませ~ん』が十分伝わってくる舞台装置。これはかなり😢。劇場にはやはり夢を見させてほしいと思う。
最初にも書いたけど、オペラの内容も音楽もわかってるのにそれでもわざわざ見に行くのは、上演時間中は別世界に浸りたいと思うのは私だけではないはず。もちろん歌手を聴きに行くのもお目当てだけど、作曲家、台本作家、オケ、指揮者、歌手、演出家、舞台、衣装全てと特別な契約を観客と交わすのが劇場なわけですものね。


盗賊の頭首カルロですが、↑これに似た移動式足場に上ったり下りたりして歌っておりました。。。盗賊ですから、山を意識したのかはわかりませんが、これ(移動式足場?)が舞台から出たり入ったりするたびに『はぁ~』とため息つきたくなってきて、最後の方は『もうその足場はいらないよ~』と心の中で呟いたのは私だけではなかったはず。
その足場、結構高くて階段も急なのか、カルロが上から降りてくるとき、手すりを両手でしっかり持ってお客さんにお尻向けて降りてきたとき観客からは『クスっ』と笑い声が一瞬あがったのも納得。
私が聴きに行った1月27日は『群盗』公演3日目。
そういえばカーテンコールの時、演出家だけ出てこなかったー!!。
風邪をひいた?やむを得ない緊急な用事?それとも初日に結構ヤジられた?
真相はなぞのまま。。。

左からロッラ(ピエトロ・ピッコーネ)、モーゼル(ダリオ・ルッソ)フランチェスコ(アルトゥール・ルチンスキ)アマーリア(ロベルタ・マンテーニャ)
指揮者ロベルト・アッバード、合唱指導ロベルトガッビアーニ、カルロ(アンデカ・ゴロチャテギ)マッシミリアーノ(リッカルド・ザネッラート)
アルミ―ニオ(サヴェーリオ・フィオーレ)

次にローマ歌劇場に行くのは5月にあるBILLY BUDDかな?

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